写真・図版
前原子力規制委員の石渡明さん=2024年10月、東京都港区、内田光撮影

 原子力規制委員会の委員として、活断層の審査をめぐって原発の再稼働を認めない結論をまとめ、60年超運転に道を開く法改正に異を唱えた地質学者が今年9月、退任した。未曽有の大事故から13年半、いつか来た道に戻ってしまってはいないか。地震や津波対策の審査を10年間率いた石渡明さんに聞いた。

 ――日本原子力発電敦賀原発2号機(福井県)の審査では、直下の断層が活断層である可能性を否定できず、新規制基準に適合しないという結論をまとめました。一部に、証明しようがないことを求める「悪魔の証明だ」との批判もあります。

 「新規制基準をもとに審査し、12万~13万年以降の活動を否定できていないと判断した結果です。事業者から見れば悪魔かもしれませんが、大した悪魔ではない。すでに17基の原発が審査に通り、うち12基が再稼働しました。事業者が、詳しい調査で、断層が動いていないことを証明し、『否定できない』とした有識者会合の結論が覆った例もあります。電力各社から見れば17勝1敗。これで相手が強すぎると言えるのか、と思います」

 ――地層の観察記録の書き換えをはじめ、原電側にも問題がありました。

 「事業者は、何としても審査を通すのが至上命令ですから、科学的な妥当性よりも自分たちのストーリーに沿ったデータを集めがちです。原電は断層の幅のデータを出していませんでしたが、確認すると最大3メートル、平均約70センチと大きかった。どこまで続くかは十分に調べないまま、それだけの断層が、調査地点から延びずになくなると言っている。ちょっと信じがたいです。基本的なデータをきちんと扱っていない不備があったと思います」

 ――もともと敦賀原発の敷地内には、「浦底断層」という活断層がありますね。

 「米カリフォルニア州では…

共有