パリ市庁舎は五輪・パラリンピック仕様に装飾され、広場では子どもたちがボードゲームをして遊んでいた=2024年5月15日、河崎優子撮影

 セーヌ川での開会式に、エッフェル塔のふもとに完成したビーチバレーボールの試合会場――。「花の都」での五輪を成功させるため、パリ郊外では着々と再開発が進んでいます。フランス社会の住宅問題に詳しい上智大の稲葉奈々子教授(社会学)は、その陰で「排除」が進み、それは、3年前の東京五輪にも共通すると指摘します。

「統合」 掲げ、進む「排除」

 ――パリ同時多発テロや移民系の若者らの暴動など、フランス社会は分断に揺れ続ける中で、パリ五輪は開かれます。

 フランス国内には移民や失業者など、社会的に排除されている人たちが多く、問題となっています。そうした人たちを包摂する「国民統合」のイベントであるとうたわれています。

インタビューに応じる稲葉奈々子・上智大教授=2024年4月、東京都千代田区、後藤遼太撮影

 ――統合を掲げる五輪で、移民が多く住むパリ郊外の再開発が進んでいます。

 郊外の再開発は元々、五輪のためではなく「大パリ計画」という、首都拡張計画の一環で進められてきました。五輪開催を機に、再開発が加速していると言えるでしょう。

新たに建設されたパリ五輪・パラリンピックの選手村=2024年4月29日、パリ郊外サンドニ、柴田悠貴撮影

 選手村が建設されたパリ北郊一帯は元々工業地帯で、住んでいたのは貧しい移民でした。サンドニ周辺の再開発では、シリアやアフガニスタンの難民が生活するキャンプの撤去が進んでいます。

 また、スタジアムの近くの労働者の寮が取り壊され、住民たちが「五輪で追い出された」と反対運動を起こしたこともあります。

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「移民頼み」の五輪なのに

 ――行き場の無い人はどうするのですか。

 フランスでは、家がない人が…

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