「納骨済」「葬儀執行済」といった表示に比べ、ひときわ目立つ「葬儀執行前」の文字。
引き取り手がいないとして連絡があった遺体の弔いがどこまで進んでいるかを「見える化」するため、名古屋市が導入した記録簿には、状況が事細かに記されている。
連絡してきたのは警察か病院か。その後、各区による親族捜しはどこまで進んだのか。引き取る親族がいなかった場合、市による火葬や納骨などは済んだのか――。
発見時に所持していた現金や、自宅などで見つかった通帳の数も詳細に記録する。所持金「0円」「6円」などもあれば、約270万円というケースも。現金があれば、火葬や納骨の費用にあてられる。なければ、通帳などをもとに金融機関に照会し、引き出しを依頼する。
市がこの記録簿をつくったきっかけは、2022年2月、引き取り手がない遺体を火葬しないまま、事実上「放置」していた事例が発覚したことだ。担当者間で情報を共有し、長く火葬されない事態を防ぐねらいがある。
墓地埋葬法では、遺体を埋葬、火葬する人がいない場合は死亡地の首長が実施すると定める。
このため、同居する家族がいない、身寄りが見つからないといった人が自宅で死亡していたり、病院で亡くなったりすると、警察や病院は自治体に連絡する。それを受け、自治体は改めて親族を捜して遺体の引き取りを打診するが、それでも引き取り手がいなければ自治体が火葬することになる。
名古屋市では、2021年12月の時点で、親族調査が終わって市が火葬することが決まったのに1年以上実施されていなかった例が6件、親族調査が1年以上たっても終わらず火葬できていない例が3件あった。遺体は葬儀社の保冷施設に保管されていたという。
当時、河村たかし市長は「申し訳ない。ご遺体への敬意を持たないといけない」などと語り、弔いが遅れたことを陳謝した。
件数が急増、多くの手続きが必要に
ただし、単純に市職員の「怠慢」とも言い切れない事情がある。
一人暮らしの人などが亡くな…