1945年7月16日、世界初の核実験「トリニティ実験」が行われた米ニューメキシコ州のアラモゴード実験場(トリニティ・サイト)では、周辺住民が被曝(ひばく)しました。親らが健康被害を受けたティナ・コルドバさんは、ニューヨーク・タイムズ紙に「トリニティ実験について、オッペンハイマーが語らなかったこと」を寄稿しました。
映画「オッペンハイマー」は何を描き、何を描かなかったのか。オッペンハイマーにゆかりのある米国人や在米日本人に聞いたインタビューシリーズの3回目です。
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昨年7月に米国で公開された映画「オッペンハイマー」を(ニューメキシコ州)サンタフェの映画館で見ました。トリニティ実験の爆発のシーンで泣いてしまいました。ニューメキシコ州の人々に起きたことの事実について、映画では何も語られませんでした。政府はまるで無人の土地にマンハッタン計画の拠点となる施設をつくったことになっています。実際には先住民族の人々の土地の作物を焼き払い、家畜を殺して追い出したのです。そして実験場周辺に住んでいた多くの人々が被害を受けました。
――ご家族にはどういう影響があったのですか。
当時4歳だった父は、実験場…