ものづくり研究で知られる藤本隆宏・早稲田大学教授(69)の編著「工場史~『ポスト冷戦期』の日本製造業」(有斐閣)が7月に出版された。一見すると企業の一部門に過ぎない「工場」。だが、その視点から1990年代以降の30年間を振り返ることで見えて来たものがあるという。それは何か。藤本さんに聞いた。

早稲田大教授の藤本隆宏さん

 「企業の社史は『正史』ですが、工場の歴史はいわば『列伝』。工場のすさまじい改善努力があっても社史に書かれることは少ない。そんな埋もれた先人の努力を後世に伝え、今後に生かしてほしいのです」。その言葉から、徹底した「現場派」経営学者の工場へのこだわりと愛を感じた。

 1979年に東京大学を卒業後、三菱総合研究所で自動車産業などの調査の仕事にたずさわった。当時は、日本から米国への自動車輸出が急増し、貿易摩擦に発展していた時代。世界の自動車産業の競争力を研究していた経営学者に誘われる形で米ハーバード大学に留学し、自動車メーカーの製品開発を研究した。日本の自動車産業研究の第一人者だ。

工場が持つ「二面性」

 約40年で訪れた国内外の工…

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