
和歌山県田辺市の認可外保育施設で2023年に生後5カ月の女児がうつぶせで意識不明となり、後に死亡したことについて、有識者でつくる県の検証委員会が14日、報告書を出した。保育士不足を常態化させている施設に対し、市も指導を怠っていたと指摘した。
報告書などによると23年7月25日午前、保育施設「託児所めぐみ」の施設長が、母親から預かった女児がうつぶせの状態でぐったりしているのに気づき、女児は搬送先で、死亡が確認された。
施設長は、複数の乳幼児を預かる際は2人以上の保育士を配置する必要があるとの国の基準に反し、0~6歳の4人を1人で保育していた。
報告書は、この施設では23年4~7月の開所日のうち約7割が「1人保育」になっていたことや、睡眠中の0歳児に必要な5分ごとの確認・記録を怠っていたことを指摘。毎年の立ち入り調査を実施している田辺市は、13~15年度に職員不足を指導したが、改善の状況を確認していなかった可能性が高いとした。
検証委の委員長を務める和歌山信愛大の森下順子教授(59)は、報告書を県に提出した後、報道陣に「施設側の基準が満たされていなかった問題と、行政が指導・監督をできていなかった問題が重なりあった」と述べた。
県は25年度から、施設への指導・監督の態勢を強めるために市町村との間で統一のルールをつくるとした。
田辺市の真砂充敏市長は「痛ましい事案が二度と起きることがないよう、こどもたちの健やかな育ちが実現できる環境づくりに全力で努める」などとのコメントを出した。