5~8歳の子ども向け童話の書き手の発掘を目指す「角野栄子あたらしい童話大賞」(主催・ポプラ社)の第1回受賞者が26日、発表された。審査委員長は「魔女の宅急便」などで知られる児童文学作家の角野栄子さん(89)。一般公募で集まった2289作品から、迂回ひなたさんの「びょうき銀行にあずけちゃえ」が大賞(賞金50万円)に選ばれた。
一人で本を読み始める年齢の子どもを対象とした童話は「幼年童話」と呼ばれる。この日東京都内であった受賞者発表式で、角野さんは「幼年童話を対象にした賞がどんどん消え、書く人がとても少なくなった。字を読み始めたばかりの子どもたちに向けた作品を大事にしなければ、日本の出版文化の将来にも関わると考え、この賞を設けた」と語った。
共催は角野栄子児童文学財団。作品募集は今年2~5月末に、商業出版されていない作品を対象に実施。自由な表現を求め、文章のみでもイラストつきでも可とした。事務局によると、応募者の年齢は7~88歳と幅広かった。大賞と優秀賞(各1作品)、奨励賞(2作品)の受賞作は書籍化を目指すという。
大賞に選ばれた迂回さんの作品は、表紙のイラスト以外は文章のみ。熱が出て学校を休まなければいけなくなった主人公「たく」が、病気を預けたり引き出したりできる「びょうき銀行」の不思議な看板を見つける、というストーリーだ。
角野さんは「ちょっと思いつかない、斬新でいい発想。ただ、この病院は大人も行けるのかとか、どんな病気でもいいのかとか、そこらへんが語られていない。何回も書き直して成長して、いい作品を読ませてほしい」と講評を述べた。
迂回さんは神奈川県在住で、小学校の教員として日々子どもと向き合っている。「かいけつゾロリ」シリーズなどで知られ、今回は特別審査員を務めた原ゆたかさん(71)は、「子どもたちの不満や楽しみをしっかり見つめて、新しい構想でお話がいっぱい生まれてくるんじゃないかという期待を込めた」と、大賞に選んだ理由を説明した。(伊藤宏樹)