花火玉をつかみ、最終の仕上げ作業に集中する今野貴文さん=2025年2月10日午後1時49分、秋田県大仙市、室矢英樹撮影

連載「HANABI」第8部 未来へ紡いでいく(6)

 意表を突く演出だった。

 「カキーン」。打球音とともに、一筋の光が放物線を描いた。全国高校野球選手権大会の大会歌「栄冠は君に輝く」のメロディーに乗って、ボールに見立てた花火がテンポよく夜空に飛び交う。

  • 【連載(7)完】花火で昇華した、亡き息子への思い 見てくれる人のため…定まった道

 気が付くと、そこかしこで観客が手拍子し、合唱している。一体感が生まれていた。

 昨年9月、秋田県大仙市で開かれた「神岡南外花火大会」。演出したのが、地元の「北日本花火興業」4代目の今野義和(61)だ。

 義和の十八番はアニメのキャラクターなど、丸くない「型物花火」。メロディーに合わせて打ち上げる「音楽花火」を日本中に広めたことでも知られる当代随一の人気花火師だ。

 昨年11月には花火界10人目となる「現代の名工」に。その祝賀会で、若い頃のエピソードを披露した。

「余計な花火を打たない」

 「大曲の花火」が終わると…

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