衆院選が15日公示され、12日間の選挙戦が始まった。自民党総裁の石破茂首相は派閥の裏金問題で失った信頼回復を目指すが、「政治改革」への歯切れは悪い。一方の野党は、自公の過半数割れを狙い追及を強めるものの、候補者一本化は十分とは言い難い状況だ。与野党ともに、ジレンマを抱えた戦いになる。

 首相が第一声の場所に選んだのは、福島県いわき市。2012年以降、過去4回の衆院選で総裁の第一声は、いずれも福島県内だった。首相は、自民党が野党だった11年の東日本大震災を振り返りつつ、聴衆に訴えかけた。

 「あの時ほど、われわれが野党で申し訳ないと思ったことはない」。民主党政権のつたなさに触れると一転、自民の反省も語り始めた。

 「パーティー収入の不記載、そういうことが二度とないよう、深い反省のもとに選挙に臨む。そしてもう一度、新しい日本をつくっていく」

「ご祝儀相場」に期待するしか

 新内閣発足からわずか2週間で衆院選へ突入した。衆院議員の任期が残り1年に迫る中、派閥の裏金問題で続く劣勢を押し返すには、首相交代による「ご祝儀相場」に期待するしかなかった。首相の決断は、自公の総意でもある。「政権は予算委員会で『何を目指すか』を示したうえで、国民に信を問うべきだ」との持論を述べてきた首相も最短日程を選択するしかなかった。

 ただし、国民からの支持は盤石ではない。

 政権発足直後に朝日新聞が実施した世論調査の内閣支持率は46%で、現行方式による01年の調査以降、2番目に低い数字だった。一方、不支持率は30%で、後に政権交代を許した麻生太郎内閣に次ぐ2番目の高さだ。裏金問題の実態解明を「進めるべきだ」との回答は、75%にのぼった。

 「トップが交代しても、自民党に対する空気はまったく変わっていない」(無派閥中堅)。自民候補の多くが、政権を失った09年に近い厳しい戦いを覚悟している。

 首相ら党執行部は、手をこまねいていたわけではない。風向きを変えようと、裏金問題に関与した12人を公認せず、さらに政治資金収支報告書の不記載があった30人以上について、比例重複を認めなかった。

安倍派候補を追い込んだ首相の判断

 首相の判断は、主に安倍派候…

共有
Exit mobile version