映画の一場面。日本プロボクシング協会の新田渉世さん(左)とボクシング談議をする袴田巌さん©Rain field Production

 1966年に静岡県でみそ製造会社専務一家4人が殺害された事件をめぐり、強盗殺人罪などで死刑確定後に再審裁判で無罪になった元プロボクサー袴田巌さん(88)の半生をたどるドキュメンタリー映画「拳(けん)と祈り」が、19日から全国で上映されている。

 再審裁判の開始が認められないなどの厳しい現実や、姉の秀子さん(91)と過ごす穏やかな日常が、2人に寄り添う監督の目線で描かれる。

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 監督・撮影・編集を担ったのは、ジャーナリストの笠井千晶さん(49)。静岡放送の記者だった2002年、無罪を訴える袴田さん直筆の手紙に関心を持ち、同放送を退社後も撮影を重ねた。収監中の巌さんを訪ねる秀子さんや、14年3月に47年7カ月ぶりに釈放された直後の巌さんの表情もカメラに収めた。

 約20年間で記録した400時間の映像を、2時間39分の作品に仕上げ、巌さんがボクシングに情熱を注いだ逮捕前の映像も加えた。

 映画のタイトルには、ボクサーを象徴する「拳」と、無罪を求める闘いとの意味を込めた「祈り」という言葉を選んだ。笠井さんは「巌さんがどういう生活を送ってきたか。2人の日常を多くの人に伝えたい」と話す。上映中の劇場などは公式サイトから(https://hakamada-film.com/)。(本間久志、田中美保)

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