耐震改修の補助金の枠組みを使って、能登半島地震で被災した住宅を修復し、次の地震に対しても強くする。そんな支援プロジェクトに名古屋工業大と建築士らのグループが取り組み始めた。

 条件にあてはまる木造住宅なら、百数十万円の補助金が出る。修復の費用負担を抑え、安心して住み続けられるようにする狙いで、自治体と協力してノウハウを広めたいという。石川県も6月補正予算案で、補助金の条件緩和を打ち出した。

 「ここの床は傾いていますね」「天井までボードが割れています」

 5月上旬、名工大高度防災工学研究センターの井戸田秀樹教授と花井勉客員教授、耐震改修を手がけてきた地元の建築士らが、石川県七尾市、輪島市の建物を調べて回った。

 倒壊を免れても、傾いたり、壁や基礎にひびが入ったりした住宅は多い。また大きな地震が来たら、どこまで耐えられるか。住み続けるには不安が残る。

 メンバーは、壁の素材、壁紙の状態やひびの大きさ、柱や床の傾き、部屋の寸法などを確認していった。手元には、各材料の損傷度合いと、地震で建物が変形した量との関係を示した対照表。これをもとに、建物がどれだけダメージを受けたかを判定する。

壁のひびの状態を調べる専門家ら=石川県七尾市

 その後の手順は、通常の耐震改修と変わらない。耐震診断用のソフトでどこをどれだけ補強すればいいかを見積もり、概算費用とともに家主に提示。強度のある合板や金具で壁や柱を補強していく。

 例えば、今の耐震基準に合う住宅を100点とした場合、もともと30点の耐震性しかない住宅があったとする。この70点分の差を引き上げるのが通常の耐震改修。地震で倒壊に至らなかったとしても、損傷が生じて30点が20点になったのなら、失った10点分を足し、80点分を引き上げるように設計する。

 被災住宅の場合、半壊で約70万円、準半壊で約34万円を上限に修理費用が出る制度があるが、これは日常生活を続けるのに必要な応急工事が対象。一方、耐震改修工事の補助額は、七尾市で160万円、輪島市で150万円までと手厚い。

 「応急工事と同時に耐震補強もすれば、補助金も使えて負担を減らせる。自宅に住み続けたいという思いに応えたい」と井戸田さん。

 壊れたところをただ直すのに比べ、確実に耐震性を高められるのが強みで、傾きが小さく原形をとどめているような木造住宅が向くという。一部損壊などで、支援金の対象外になった世帯の救済策になる可能性がある。

 目指すのは、耐震性の指標「評点」で、今の耐震基準並みの1.0以上か、倒壊を免れる可能性が高まる0.7以上。倒壊さえしなければ、命が助かる可能性は格段に高まる。通常より補強箇所は増えるものの、低コストな改修工法を採用して自己負担を抑える。

 いくつかの被災住宅で実際に工事につなげ、地元の設計事務所や工務店への普及を目指す。条件を満たせば、地震で失われた分も補助金の対象になることは両市に確認した。

 しかも、今の耐震基準で建っ…

共有