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金銅冠=奈良県立橿原考古学研究所提供
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 奈良県斑鳩町の藤ノ木古墳(6世紀後半)から見つかり、同県立橿原考古学研究所(橿考研)付属博物館で保管されてきた計1万6千点にのぼる国宝の出土品について、橿考研が13年にわたる大規模な保存処理と再修理のプロジェクトを進めている。保管機関が国宝を一括して直接修理するケースは珍しく、修理技術や分析手法などノウハウの継承にもつながるとして注目されている。

 藤ノ木古墳は1985年に橿考研が発掘調査し、横穴式石室と家形石棺の中から金銅製馬具や金銅製冠、金銅製履(くつ)などの豪華な副葬品がみつかった。

 6世紀後半の朝鮮半島は、日本列島の大陸文化への窓口でもあった加耶(かや)諸国が新羅に滅ぼされ、ヤマト王権や有力豪族は新たな窓口を百済や新羅に求めた時期だった。

 藤ノ木古墳の出土品は、このような激動の東アジア世界との交流や工芸技術などを知る第1級の資料とされ、2004年に国宝に。国が所有し、橿考研博物館が保管してきた。経年劣化が確認されたことなどから立ち上げられたプロジェクトも、橿考研が文化庁の文化財修理事業を受託する形で進められている。

再修理の過程で新知見も

 橿考研の奥山誠義総括研究員…

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