「かっけえ……」
チームメートの試合を見届け、雷電の控室から出てきた萩原聖人はつぶやいた。
ズボンのポケットに両手を突っ込み、なにかを受け取ったような表情で階段を下りていく。
他のチームの控室からは「なんで放銃しなかったんだろう」という声も聞こえてきた。
放銃待ったなし。雷電・本田朋広は絶体絶命の状況に陥っていた。誰もがラス落ちを覚悟した場面で、本田は3着死守のテンパイを取りきった。
放銃、ノーテン、ラス目の選手のアガリ。いずれが起きてもラスに落ちてしまうオーラスだった。配牌(はいぱい)から本田の手には、形として使うのが難しく、ラス目のサクラナイツ・岡田紗佳のアガリ牌でもある9ピンがあった。
元Mリーガーの朝倉康心プロは「本田さんは自分の読みを信じた思い切りの良いプレーが目立った。先入観にとらわれていない、自由な発想だなと感じました」と振り返る。
牌図はサクラナイツ・岡田、ドリブンズ・浅見真紀、雷電・本田、パイレーツ・瑞原明奈による11月4日の第1試合南4局5巡目。
ラス目の岡田と3着目の本田の点差は500点。岡田がアガれば本田はラスに落ちる。
岡田は1巡目に「東」、2巡目に「西」をポン。3巡目に1ピンを手出しすると、同巡に3ピンを2、4ピンのカンチャンの形で鳴き、「南」を手出し。岡田は南家なので、ピンズの混一色(ホンイーソー)の可能性が高い。
朝倉プロは「岡田さんは3副露(フーロ)して、1ピンも余ったのでさすがにテンパイに見える。トップ目で親番の瑞原さんは、2着目の浅見さんに満貫をツモられるとまくられるので岡田さんにアガって欲しくて、4巡目には8ピンを打ってアシストしている。試合終了が迫る状況に加え、流れてもノーテンでラスになる本田さんはかなり絶望的」と分析する。
5巡目、本田の手には岡田のアガリ牌である7、9ピンがあった。
実況の古橋崇志プロは「ここで9ピンになってもおかしくない」と叫ぶ。
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