ロンドンで2024年7月5日、下院総選挙の開票作業が続く中、喜ぶ労働党のスターマー党首(中央)=ロイター
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 英国下院(定数650)の総選挙は4日午後10時(日本時間5日午前6時)、投票が締め切られた。英公共放送BBCや民放ITV、スカイニュースが合同で行った出口調査によると、最大野党・労働党が与党・保守党の3倍以上の議席を獲得し、14年ぶりに政権を奪取する公算が大きくなった。

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 出口調査によると、獲得議席の予測は、労働党410(解散前206議席)▽保守党131(同345)▽自由民主党61(同15)▽改革党13(同1)▽スコットランド国民党10(同43)。開票は夜通し行われ、労働党の「単独過半数」は現地時間5日早朝ごろに確定する見通し。

 スナク首相率いる保守党は、第2次大戦後最低となった1997年の165議席をも下回り、選挙権が拡大された1832年以降で最低の議席数になるとの予測になった。当選5回を誇るシャップス国防相は労働党候補に敗北し、他にも複数の閣僚が落選する可能性がある。

 歴史的大敗の原因は有権者の信頼を失ったことにある。ジョンソン首相(当時)はコロナ禍の最中に官邸でパーティーを催していたことが発覚して辞任。後を継いだトラス首相は裏付けの乏しい減税策の発表で混乱を招き、49日で辞任した。

 追い打ちをかけたのが、改革党の躍進だ。ポピュリストであるナイジェル・ファラージ氏は、選挙期間中に同党党首への復帰と立候補を突然発表。移民対策などで主張が重なる保守党の票を奪う形になった。保守党は今後、新たな党首選びと並行して党の方針を再検討する必要に迫られる。

 労働党は97年、第2次大戦後で単一政党として最多となる418議席を獲得したが、それに迫る大勝になる情勢だ。2020年から党首を務めるキア・スターマー氏(61)が5日中に次期首相になるとみられる。

 スターマー氏は5日未明、ロンドンの自らの選挙区で「民主主義を生かすのは、国会議事堂でも官公庁街でもない。英国各地の投票所だ。ここから全てが始まり、変化が起きるのだ」と支持者に訴えた。

 スターマー氏はコービン前党首の急進左派路線を転換し、穏健・中道派に戻すことで支持を取り戻した。出口調査通りの圧勝となれば、次の選挙までまずは最長5年間、党内に数十人いる急進左派勢力を過度に気にかける必要がなくなる。

 今回の総選挙では、生活費の高騰や公的医療サービスの危機的状況、移民の急激な増加といった課題への対応が争点となっていた。(ロンドン=藤原学思)

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