名古屋地裁に入る原告の若者たち=2024年8月6日、名古屋市中区、高橋俊成撮影

 深刻化する気候変動を食い止めようと、全国の15~29歳の若者16人が6日、大手電力など10社を相手取り、国際目標の達成を妨げるような温室効果ガス排出の差し止めを求めて、名古屋地裁に提訴した。

  • 若者の訴えは日本の気候政策を変える契機 司法はしっかり耳傾けよ

 気候変動に関する訴訟は世界中で増えており、大企業や国の責任を認める判断も相次ぐ。弁護団によると、若者だけが原告になる気候変動訴訟は国内で初めてだという。

 訴えられたのは、東京電力グループと中部電力が共同出資するJERA、Jパワー(電源開発)、神戸製鋼所、北海道、東北、北陸、関西、中国、四国、九州の各電力会社の計10社。原告側によると、10社は日本のエネルギー起源の二酸化炭素(CO2)のうち4割を占める大排出企業であるため選んだという。

JERAの碧南火力発電所=2021年10月18日、愛知県碧南市

 産業革命前からの気温上昇を1.5度以下に抑えるという国際目標達成には、国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が世界のCO2を19年比で30年までに48%、35年までに65%削減する必要があると指摘している。これは許容される炭素排出量「カーボンバジェット(炭素予算)」と解される。

 訴状などによると、10社の掲げる目標はこれに達しておらず、民法の不法行為に基づき、許容される量を上回るような排出の差し止めを請求した。

 英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの研究機関の23年の報告書によると、昨年5月までに世界で少なくとも約2300件の気候変動訴訟があった。今年4月には、欧州人権裁判所がスイス政府の気候変動対策の不十分さを人権侵害だと認める判決が出た。(市野塊)

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