JR芸備線の一部区間の存廃などを議論する「再構築協議会」の実務者レベルでの初の「幹事会」が16日、岡山市内であった。存廃を前提とせず、まずは芸備線の可能性を最大限追求することで合意。まちづくりや観光振興などに関する新たなデータを集める調査事業を実施することでまとまった。
対象区間は、芸備線の備後庄原(広島県庄原市)―備中神代(岡山県新見市)間の68・5キロ。幹事会には、国やJR西日本、岡山・広島両県、沿線自治体の担当者らが出席し、一部非公開で行われた。
検討の進め方をめぐっては、芸備線の可能性について議論を尽くしたあと、バスなどのより利便性の高い公共交通の実現に向けたあり方を検討するという「二段構え」で実施することを国側が提案し、合意した。
3月の第1回再構築協で自治体側から「会社は黒字なのになぜ路線を維持できないか」と問われたことについて、JR西は「利用が少ないローカル線に利便性や生産性を高める設備投資などを単独ですることは困難だ」と説明。この区間の2017年度~22年度の収支が5・8億~8・6億円の赤字という詳しいデータを提出した。
この回答に、庄原市の岡本貢・生活福祉部長が「国の責任でJR西に経費の支援など積極的な対策を講じて欲しい」などと要望した。
幹事会では、沿線住民や利用者などを想定したヒアリングの実施でも合意。観光振興などの調査事業の具体的な手法や項目は次回7月の幹事会で結論を出すとした。
終了後、会見したJR西・広島支社の奥井明彦副支社長は、設備投資が困難な理由について「民間企業なので、株主やステークホルダーへの説明という点では、今の利用実態を考えると難しいという判断をしている」と話した。
岡山県の玉置明日夫・県民生活部長は「住民が安心して暮らせることが大事で、しっかり方向性を出していきたい」、広島県の岡田浩二・地域政策局長は「観光振興も含めた議論を進めるという共通認識を確認できた」、新見市の古家孝之・福祉部長は「歩みが進んで有意義だった」とそれぞれ述べた。(上山崎雅泰)
■芸備線(備中神代―備後庄原)の輸送密度や収支
《2017年度》
平均通過人員(輸送密度) 57
収支率 2.1%
営業収益(運輸収入、億円) 0.2
営業損益(管理費含む、億円) ▼7.9
《2018年度》
平均通過人員(輸送密度) 43
収支率 1.6%
営業収益(運輸収入、億円) 0.1
営業損益(管理費含む、億円) ▼7.7
《2019年度》
平均通過人員(輸送密度) 48
収支率 1.5%
営業収益(運輸収入、億円) 0.1
営業損益(管理費含む、億円) ▼8.6
《2020年度》
平均通過人員(輸送密度) 47
収支率 1.7%
営業収益(運輸収入、億円) 0.1
営業損益(管理費含む、億円) ▼6.8
《2021年度》
平均通過人員(輸送密度) 50
収支率 2.0%
営業収益(運輸収入、億円) 0.1
営業損益(管理費含む、億円) ▼6.5
《2022年度》
平均通過人員(輸送密度) 58
収支率 2.7%
営業収益(運輸収入、億円) 0.2
営業損益(管理費含む、億円) ▼5.8
《平均》
平均通過人員(輸送密度) ―
収支率 1.9%
営業収益(運輸収入、億円) 0.1
営業損益(管理費含む、億円) ▼7.2
※JR西日本の資料から。▼はマイナス