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映画のワンシーン。願いを書いた短冊を見る患者と医師=アスツナグエイゾウ提供
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 人は最期を迎えるときに、どんな願いを持つのか――。終末期の患者とその家族を追いかけてきた、ドキュメンタリー映画監督・溝渕雅幸さんの最新作「近江ミッション 願いと祈りと喜びと」が2025年1月から全国で順次公開される。

 舞台は、滋賀県近江八幡市にあるヴォーリズ記念病院の緩和ケア病棟。取材期間は2022年末から24年6月までの間、およそ500日だ。

 がん末期の患者5人とその家族の姿を描いた本作は、患者と家族が持つ「願い」に焦点を当てている。

 末期がんの80代の女性は「自宅で過ごしたい」と願う。医師やスタッフ、家族が、その願いにどのように応えるのか。女性が病院を出て自宅で過ごすためには何が必要かを話し合う会議のシーンでは、女性と同居する長女の不安に医師が優しく声をかけ、寄り添う。女性は在宅医療を受けながら、長女とともに最期の日々を穏やかに過ごした。

 「患者の女性だけでなく、長女の表情も変わっていく様子が分かる。自宅の部屋は、2人の願いと喜びに満ちあふれていた」と溝渕さんは話す。

 国の統計では1951年、人が亡くなる場所は8割が自宅で、1割が病院だった。しかし、病院死が在宅死の数を越え、近年は7割が病院、1割が自宅となった。病院死が増えたことで「死が見えづらくなった」と溝渕さんは言う。「普通の人が迎える普通の死を語ろう」と、これまで、高知県四万十市や奈良県明日香村の診療所の医師らの目を通した患者の姿を撮ってきた。今作が5作目だ。

 公開は、TOHOシネマズ日本橋(東京都中央区)で1月10日から。全国でも順次公開される。詳しくはホームページ(https://www.inochi-hospice.com/別ウインドウで開きます)へ。

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