神奈川県立障害者施設「愛名やまゆり園」(厚木市)で2022年度までの約8年間に、入所者に対する虐待行為が日常的に繰り返されていたことが第三者委員会の調査でわかった。県はこのうち元職員を含む職員9人による計38件について障害者虐待防止法に抵触する恐れがあると判断し、関係自治体に通報した。
同園は、入所者19人が殺害される事件が起きた相模原市の県立障害者施設「津久井やまゆり園」とは別の施設。いずれも県の指定管理を受けた社会福祉法人「かながわ共同会」(秦野市)が運営している。
弁護士らによる第三者委は、元職員が入所者を転倒させ、重傷を負わせたとして傷害容疑で逮捕されたことをきっかけに今年1月に共同会が設置。退職者を含む職員40人から聞き取りして事件の背景などを調査してきた。
その結果、元職員を含む職員9人が入所者11人に対し、腹部をボクサーのように何度も殴る▽頭をスマホやゴムハンマーでたたく▽自慰行為を強要するといった行為が横行していたとの証言が一部職員から得られた。元職員1人を除く8人はこうした虐待を否定したが、第三者委は一部職員の証言が具体的であることなどから信用性があると判断した。
「虐待と思わない体質が問題」
第三者委の佐藤彰一弁護士は10日の記者会見で、「虐待を聞いたことがないという職員も多かった。虐待だと思わない体質が問題だ」と指摘。虐待があったとされる施設の寮の職員の半数以上が21、22年度に異動しており、管理職が虐待の発覚を隠すための措置だった疑いもあるという。「虐待が起きる度に真摯(しんし)な反省ができていない。職員の(個人の)問題だと考えてしまうことが法人の問題だ」と批判した。(増田勇介)