打ち初めで、御陣乗太鼓をたたく人たち=2025年1月2日午前、石川県輪島市、金居達朗撮影

 石川県の無形民俗文化財に指定されている輪島市名舟町の「御陣乗(ごじんじょ)太鼓」の打ち初めが2日、同町の会館であった。保存会の16人や小学生らがバチを頭上まで振り上げ、一つの太鼓を代わる代わる打ち鳴らした。

 保存会によると、御陣乗太鼓は上杉謙信軍の奇襲を撃退するために陣太鼓を鳴らしたことに由来する。毎年1月2日に同町の白山神社で披露されてきたが、昨年の能登半島地震で神社が全壊し、会場を移した。

 名舟町の自宅が全壊して金沢市内で祖父母と暮らす小学6年の赤田拓真さん(12)もバチを握った。金沢では太鼓の練習ができないといい、「たたいているときのペースが懐かしかった」と話した。

 保存会によると、会館もガラスが割れるなど被災したが、保管していた15個ほどの太鼓はすべて無事だったという。事務局長の槌谷博之さん(57)は「何百年と続いている行事。途切れさせるわけにはいかなかったので、やることができてほっとしている」と語る。

 同町の区長で保存会長の古酒谷政幸さん(76)によると、同町を含む輪島市南志見(なじみ)地区では震災前の342世帯からほぼ半減。多くが仮設住宅で暮らしている。「若い人が出てこないと続かない。こうしてたたいてくれるのはいいこと。観光の屋台骨を南志見で支えたい」と話す。

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