松岡正剛「『わかりやすさ』に抵抗がある」

 正体がよくわからない? それは狙いでもあるんだけどね。さて、どういうふうに説明ができるか。これまであまり自分語りはしてこなかったので、この機会に私自身も考えながら話してみようかなと思います。

 《作家とも編集者とも言いきれず、編集工学研究所の所長や角川武蔵野ミュージアムの館長は役職に過ぎない。受け取った名刺にも、肩書はなかった》

 社会に出る前から、アイデンティティーについての深い疑問がありました。私のなかには自然観や科学観が大切なものとしてあって、自分が人間であり、男であり、日本人であること以上に、生物であり、植物から離れた動物であることの方がよっぽど不思議で魅力的なんです。

 編集工学者・松岡正剛さんが半生を振り返る連載「『わかりやすさ』に抵抗がある」。全4回の初回です。

 そうすると、いくら自分とい…

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