2050年、人口がいまの半数未満になる自治体は2割あり、高齢化率が50%を超える自治体は3割を超えるとされる。老いて縮む能登は、多くの自治体にとって、近い将来の自身の姿と重なる。「関係人口」は再生のカギになるのか。
- 能登から離れかけた心、結び留めた移住仲間 復興の鍵は「関係人口」
「人口が減少していく時代には人材をシェアするように、大きく価値観を転換しなければならない」。昨年12月、東京・永田町で開かれた新しい地方創生策を議論する有識者会議で、高橋博之さん(50)が発言した。自治体間で人口を奪い合う移住ではなく、関係人口の拡大に施策の重点を置くよう訴えたのだ。
元岩手県議で2011年3月の東日本大震災後、都市から支援に来たボランティアが、被災者に感謝されることで「生きる実感」を得て、逆に支えられている姿を目の当たりにした。
この関係を平時から生みだそうと、地方の農水産物を直接購入できるアプリの運営会社「雨風太陽」を設立。交流人口と定住人口の間の考え方として関係人口を提唱し、人口過密の都市と人手不足の地方を「かきまぜる」ことで、双方が抱える問題の解決をめざしている。
昨年1月に能登半島地震が起きると、すぐに被災地に支援に入った。石川県の復旧・復興アドバイザリーボードのメンバーに選ばれ、創造的復興プランの最重点課題に「関係人口の拡大」を盛り込むよう求めた。
高度経済成長期以降、東京への人口一極集中が続いている日本。一方、全体では人口減少と少子高齢化が進んでおり、地方は公共交通や医療といった生活サービスの基盤が、崩壊する危機に直面している。
「住民税の分割納付」を提案
国のめざす姿を示す「国土形成計画」(2023年7月閣議決定)では、東京一極集中の是正や地域の担い手確保のため、関係人口の拡大や二地域居住の促進を打ち出し、関係人口を2032年度をめどに、コロナ禍前の1・5倍にあたる3千万人まで増やすことを掲げる。昨年11月には「改正広域的地域活性化法(二地域居住促進法)」を施行した。
政府は14年から「地方創生」の取り組みを開始。地域産業の競争力強化や地方移住の推進を図るとして、関連予算は16~24年度で計約1兆5500億円にのぼる。
だが、昨年6月に公表された10年間の取り組みを検証した報告書では、「人口減少や東京圏への一極集中などの大きな流れを変えるには至っておらず、地方が厳しい状況にあることを重く受け止める必要がある」と総括。その反省をもとに始まったのが、新しい地方創生策を議論する有識者会議だ。
高橋さんは会議で、関係人口拡大のため、居住地以外にも住民登録できる「ふるさと住民登録制度」の創設を提案した。ふるさと住民は地方で行政サービスを受けられる一方、住民税の分割納付をできるようにして、自治体の財源確保につなげる仕組みだ。
昨年末にまとめられた新しい地方創生策の「基本的な考え方」の中では、この制度について言及されなかったものの、基本構想の策定に向け、検討を進めるという。
住民登録は国の根幹に関わる制度だが、そこに手を入れるほど劇的な変革をしないと、社会が立ちゆかなくなる危機感が、高橋さんにはある。「東京への人口集中は国策として進められた。再び国が前面に立ち、社会を再構成するほどの取り組みをしないと、流れを変えられない」
高齢化率50%の町 32社のサテライトオフィス集結
関係人口は、受け入れる地域だけでなく、関わる本人も変える。
「にぎやかな過疎」のまちを…