国立国際美術館での個展で、版画について語る梅津庸一さん

 日本の油彩画の歴史を再考するような絵画作品から脱力感のある陶芸までを手掛ける美術家の梅津(うめつ)庸一さん(42)が関わる展覧会が続いている。今も大阪と東京の美術館で、大規模個展と自らが構成した企画展が開催中だ。なぜ彼は、美術館から愛されているのか。

 黒田清輝やその師ラファエル・コランの裸婦像を自身の裸体像に置き換えて点描で表現した絵画群や、ほとんど機能を失ったようなアメーバ的形状の陶芸作品が延々と並ぶ。さらに版画技法による自作の壁紙を張った展示室に版画作品を掛け、壁紙と作品をある意味で等価にする試みや、梅津さんが主宰する私塾「パープルーム」の活動を紹介するコーナーもある。

 大阪・国立国際美術館の「梅津庸一 クリスタルパレス」展は600点弱で、20年の活動を半ばカオス的展示で見せる。お気に入りのビジュアル系バンドと共働した映像作品まである。

 一方、東京・ワタリウム美術館の「梅津庸一 エキシビションメーカー」は同館の前身のギャラリー時代に集めた作品群を梅津さんが構成。自作も加えて見せている。ここでは大阪での展示とそっくりのカラフルな壁が登場。同館は約3年前にも梅津さんの個展を開いている。

 さらに、今春、東京・上野の国立西洋美術館で開催された同館初の本格的な現代美術のグループ展「ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?」の出品21人・組のなかに梅津さんとパープルーム双方が選ばれ、かなりの展示面積を占めていた。

 なぜこんなに梅津さんは展覧会の機会が続くのか。

 3館の企画担当者に聞くと…

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