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会見する東京都薬剤師会の高橋正夫会長(右)=2024年11月8日、東京都千代田区、藤谷和広撮影

 緊急避妊薬を処方箋(せん)なしで試験販売する国の研究事業で、参加する薬局が今年秋に全国145店から約340店に拡大した。処方箋がいらない「OTC医薬品」にするかどうかを判断するため、利用状況や適切な販売体制をさらに調べる狙いだ。一方、東京都では説明のないまま試験販売が1カ月、中断する一幕もあった。

 緊急避妊薬は、望まない妊娠を防ぐために排卵を遅らせる薬。性交後72時間以内にのめば、8割の確率で避妊できるとされる。

 購入には、医師の処方箋が必要だが、近くに受診できる医療機関がなかったり、受診に心理的な負担を感じたりする人が薬を使いづらい課題もある。

 そこで、厚生労働省は昨年11月、処方箋がいらないOTC医薬品への切り替えが可能かを判断するための情報収集として、研究事業を始めた。

 事業は日本薬剤師会に委託。薬剤師が研修を受けて、夜間や土日にも対応できる145店が選ばれた。各薬局と連携する産婦人科医も設定された。

 事業は昨年度までの予定だったが、厚労省は「十分なデータが確保されていない」と判断し、今年度も継続して、参加薬局を広げることになった。

 拡大後の今年10月時点の参加薬局は、東京が20店で最も多く、次いで岩手18店、茨城18店、愛知16店、神奈川14店。一方、埼玉や福岡は3店にとどまり、地域差が大きい。産婦人科医と連携する条件などが影響しているとみられている。

 参加薬局は事業のウェブサイト(https://www.pharmacy-ec-trial.jp/別ウインドウで開きます)で公開されている。

 市民団体からは、試験販売の継続ではなく、いち早くOTC医薬品になることを望む声が上がっている。

東京で1カ月試験販売が停止、その理由は?

 一方で、東京では9月末から1カ月、すべての試験販売が止まった。10月29日に参加薬局を5店から20店に増やして再開したが、経緯について十分な説明はなかった。

 きっかけは、日本産婦人科医…

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