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うたをよむ 土井礼一郎

 歌壇俳壇面のコラム「うたをよむ」。今回は歌人の土井礼一郎さんが、家族を主題にした2冊の歌集を取り上げます。

 なんの花か知らずにあなたが買ってきた火花をときどき散らすその花

 当たり前のようにほかの誰とも違うあなただけのそのあたらしい声

 堀静香『みじかい曲』が描くのは、一人の女性の結婚から出産までの物語。しかし、他人にも了解されやすいライフステージの変遷とは別に、ずっとかわらず低回し続ける自我がある。その自我の居心地の悪さこそが本当のテーマであろう。

 引用は歌集の序盤と終盤から。一首目の「あなた」は夫で、「火花をときどき散らすその花」とは、結婚という社会制度に本心ではすんなり従うことのできない主人公の気持ちを暗示しているのではないか。片や二首目の「あなた」は生まれてきた子供だが、出産の喜びを直截(ちょくせつ)には描かず、その生の出発から子供を一個の独立した自我として認めようとする。

 今日夜道あかるく見えて妹と…

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