記者会見でJR米坂線の復旧について語る吉村美栄子知事(左)=2024年6月6日午前10時8分、山形県庁
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 2022年8月の災害で一部区間の不通が続くJR米坂線について、山形県の吉村美栄子知事は6日の定例記者会見で、「基本的にはJR東日本による復旧と運営を求めていく」と述べた。

 JR東日本は5月29日の復旧検討会議で、復旧後の利用者数を試算した結果をもとに「JRが運営することを前提とした復旧は難しい」と説明した。

 これに対して吉村知事は、災害からの復旧が前提という従来の認識を強調。その上で、地方創生や観光、災害への備えといった観点から「経営、運営の視点だけで進めていくのはいかがなものか。公共交通機関だという視点を、もっと政府もJRも持っていただきたい」と注文をつけた。

 一方で、運営にかかわる自治体の財政負担については「これから沿線自治体と議論を進めていく」とするにとどまった。

 また、JRの試算について「条件によって結果も変わってくる」として、今後も利用拡大に取り組む考えを示した。

 新潟県の花角英世知事も5日の記者会見で、JRによる復旧と運営が望ましいとの見解を示している。(大谷秀幸)

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 JR米坂線は被災による一部区間の運休から、あと2カ月で2年がたつ。早期の復旧を訴えてきた沿線自治体は、将来の道筋が固まらないことに焦燥感を募らせる。

 5月31日、飯豊町で「JR米坂線復旧をすすめる飯豊の会」の設立総会が開かれた。町内などの100余りの企業や団体が会員に名を連ねた。

 来賓として出席した後藤幸平町長はあいさつで、2日前に開かれた3回目の復旧検討会議に関するネット上の反応を紹介。JR東日本が米坂線の利用の試算を示したことで、「復旧は本当に必要か」「費用対効果からすると車や代行バスで十分ではないか」などの意見が載っていたという。後藤町長は「必要とする人がいる以上、公共交通は必要。採算だけでやるなら本末転倒」と述べた。

 発起人代表で会長に就いた菅野富士雄・町議会議長も「米坂線は環境面、経済面としてもなくてはならないもの。鉄路は活用によっては必ず使い道がある」などと話し、町民と一体となって要望していくとした。

 設立趣意書では、「高校がない飯豊町では高校生の通学手段や高齢者の移動手段など、JR米坂線は町民の足として大切な役割を担ってきた」「災害後バスの代行輸送が行われているが、利便性の観点から鉄道の復活を望む声が多い」などとし、①復旧に向け国や県、JR東日本の関係団体に働きかける②観光活性化など利用促進に向けた取り組みを進める、としている。個人会員の拡大にも力を入れるという。

 27日には、県幹部と市町村の首長らとが県政全般について意見を交わす会議が県庁で開かれた。「復旧に向けた具体的な動きはなかなか見えてこない。住民らからは早期の復旧を求める声のみが寄せられている」。小国町の仁科洋一町長は、JRや山形、新潟両県などによる復旧検討会議で大きな進展が見られないとして、県のより強いリーダーシップを求めた。これに対し、吉村美栄子知事は「沿線市町村の盛り上がりも大事」とし、一丸となった取り組みが重要との認識を示した。

 小国町では昨年12月、「JR米坂線復旧小国期成同盟会」が設立された。新潟県関川村でも、今年夏の立ち上げに向けて準備しているという。(大谷秀幸、高橋昌宏)

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