国連気候変動会議(COP29)の会場敷地内に設置されたロゴ=2024年11月10日、バクー、市野塊撮影

記者解説 国際報道部(元科学みらい部)・市野塊、科学みらい部・福地慶太郎

 昨年11月にアゼルバイジャンの首都バクーであった国連気候変動会議(COP29)は、会期を約36時間延長し閉幕した。先進国側が2035年までに現在の3倍の年3千億ドル(約47兆円)を拠出するといった、新たな途上国支援の資金目標に合意した。

 温室効果ガスの排出は大幅な削減が急務だとされるが、削減強化に向けた成果は乏しかった。

 原因である化石燃料の使用減については、前年のCOP28の「化石燃料からの脱却」などの表現を引き継いだだけだった。近年の国際交渉では、徐々に脱化石燃料に関する表現が強まっていた。米シンクタンク「世界資源研究所」(WRI)はこれまでの約束を再確認したに過ぎないと指摘する。

 盛り上がりを欠いた一因に、開幕直前に米大統領選で勝利したトランプ氏の影響も指摘される。米国は世界1位の経済大国で、第2位の排出国でもある。発言力は大きく、過去には交渉に後ろ向きな中国や中東の産油国などを説得したこともあった。

 だが、トランプ氏は気候変動対策の国際ルール「パリ協定」の脱退を示唆し、化石燃料の増産をあおってきた。大統領に就任した今月、パリ協定脱退の大統領令に署名。米政府の貢献は当分期待できず、世界の気候変動対策が混迷することも予想される。

 一方、交渉では米国の存在感の低下を見据え、積極的に仕掛けた国もあった。

ポイント

 気候変動の交渉で米国に代わる主役争いが激化するなか、日本の存在感が問われる。脱炭素を名目とする各国の原発推進には、安全性や核拡散のリスクが懸念される。日本は気候変動の脅威や対策の重要さを直視し、政策の優先度を見直すべきだ。

 主要7カ国(G7)である英…

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