
精神科医療や福祉のあり方をめぐり、国は「入院中心から地域生活中心へ」という理念のもとに取り組んでいますが、道半ばです。一方、民間の精神科病院の多さといった日本と共通点もあるベルギーは、精神科医師ら多職種からなる「モバイルチーム」による精神疾患のある本人宅への訪問や、地域ネットワークを軸に精神医療改革を進めています。日本が学び、生かせることはあるでしょうか。精神科医療や地域ケアに詳しい伊藤弘人・東北医科薬科大教授(地域医療管理学)に聞きました。
私が私であるために~ベルギーの精神医療改革
日本と同じように、精神科医療を多くの民間病院が支えているベルギー。「本人中心」の理念をもとに地域医療へと軸足を移し、長期の入院を減らそうとしています。どんな取り組みなのでしょうか。日本の医療・福祉分野の関係者とともに現地を訪ねました。
――ベルギーの改革をどう見ていますか
精神科医療、障害福祉、就労支援、住宅紹介など様々な領域の要素を最適に組み合わせ、実質的に機能させる「仕組み」があることが、ベルギーの優れた点だと思います。
日本にも各要素はすでにあります。ただ、それらを統合して、精神疾患を有する本人を中心に据えて、一体的に機能する仕組みが追いついていないことが課題です。
――どのようなことでしょうか
ベルギーのネットワークに近…