2023年の甲子園ブラスバンドフェスティバルで、おなじみの曲名のプラカードを出す龍谷大平安の生徒=2023年6月11日午後3時15分、兵庫県西宮市、林敏行撮影
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 「ファゴットはないよ……」

 高校に入って間もなくの2年前、福元陽依(ひより)さんは先輩から衝撃の事実を聞いて、泣いた。

 中学で吹奏楽部だった福元さんが龍谷大平安(京都)を進学先に選んだのは、平安の野球の応援に憧れたからだった。

 「いかついやつ」「ドカーン」。高校野球ファンによく知られる一風変わった名前の応援曲は、ほとんどがオリジナルだ。

 特に、重低音のボレロのようなリズムが不穏な空気を醸し出す「あやしい曲」は平安の代名詞。アルプススタンドから流れると、相手校に威圧感や「追い込まれる感じ」を与える。そんな応援に加わりたいと思った。

 中学の吹奏楽部で吹いていたのはホルン。高校では、少人数の中学校にはなかったもう一つの憧れ、「ダブルリード属」のファゴットを選んだ。

 だが、実はダブルリード属の木管楽器は日射などに弱く、野球の応援には加わらないことが多い。それを先輩から聞いたのは、練習を始めてしばらくが経ってからだった。

アルプスの夏音

高校野球の応援の演奏をめぐる物語

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