【動画】手に埋め込まれたマイクロチップの情報を読み取る=竹石涼子撮影

 手ぶらで出かけて、自宅の住所や家族の連絡先が思い出せなくても、今どこにいるか分からなくなっても、居場所を伝えることができる。

 そんなシステムの開発が始まっている。

 焦点となるのは、色鉛筆の芯ほどの細さの小さなチップだ。

 大手プラットフォーム開発企業の社内ベンチャー「メディホーム」を率いる塩澤繁さんの右手には、長さ1.2センチ、直径2ミリほどのチップが入っている。

写真・図版
手のひらに乗せたマイクロチップ。手のしわにおさまるほどの細さ=2024年7月、都内、竹石涼子撮影

スマホで情報表示

 情報を読み取るアプリが入ったスマホを手に触れるくらいに近づけると、あらかじめ登録した名前や連絡先が表示される。内容はパソコンで編集ができ、持病なども表示できる。居場所を特定される心配はないという。

 埋め込みは海外では注射器で行うが、医療機器としての手続きがいるため、国内ではメスなどの簡単な手術器具で小さな穴をあけている。取り出すときも、小さな穴をあけて押し出す。

 いまは、都内のクリニックと提携して健康な希望者に使ってもらっているという。まだ開発段階だが、認知症の人にとってもさまざまな可能性が広がる、と塩澤さんは話す。「手をかざすだけで家のカギを開けることもできる。認知症になる前から慣れておけば、認知症になったとしてもカギがない、と探すこともない。将来的には、認知症のある方が道に迷っても、気づいた人がスマホをかざすだけで、緊急連絡先を伝えることができるようにしたい」

 チップの正規輸入代理店「VivoKey Japan」の龍﨑フリオさんは、輸入元の米企業と協力しながら、アプリの開発も進めている。認証されたマイクロチップをスマホで読み取ったときだけ、あらかじめ登録した連絡先に位置情報やメッセージが送信できる。「困ったときだけ、個人情報を聞き出すことなく、位置情報を送れるのが利点」と強調する。

救急の現場から期待の声も

 日本医科大千葉北総病院の講…

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