コロナ下でプログラミングと料理を学んだという医師の内田直樹さん=福岡市東区、辻外記子撮影

 認知症の人が挑戦も失敗もできる。そんな社会をめざして活動する医師が、福岡市にいます。「福岡を世界一、認知症フレンドリーな街にする」が目標という内田直樹さん(46)にお話を聞きました。

 ――認知症の人を中心に診る在宅医になった経緯を教えてください。

 大学病院の精神科に在籍して12年がたち一区切り。違うことをしようと周囲を見渡すと、一番楽しそうにしていたのが在宅医療をしていた医師でした。

 2015年、福岡市のたろうクリニック院長に就きました。何でも診る一般的なかかりつけ医になるつもりでしたが、認知症の男性宅を訪れると、「病気がないけん、病院には行かん」。通院を拒む一方、男性は「薬、飲む」と僕の訪問診療を受け入れてくれました。

 認知症や統合失調症など、精神科の患者さんは、入院するか外来受診かの二択でした。でも、どうやら在宅医療のニーズが高そうだと感じ、困っている人はいないか聞いて回ると、まばらだったクリニックの患者が、どんどん増えました。

 精神科医の学会で在宅医療の重要性を説き、在宅医療の学会で認知症診療について話しました。講演や執筆依頼も増えたのですが、2年ほどで限界に気付きます。

早期発見という壁

 ――どういうことですか。

 受診するのは、発症から時間がたち認知症が進行した人が多く、改善のためにできることが少ないのです。「もっと早くに認知症を見つけられれば、対処法はあるのに」。早期発見の壁です。

 そこで、施設職員や家族、市民に認知症とはどんなものか、理解を深めてほしい、と講演会や勉強会を始めました。さらに、医師や他の医療職の人と、実際の事例をもとに改善策を探る検討会も続けています。

 こうした活動をしていた17年、「認知症フレンドリー」な社会をめざすイギリスの取り組みを知りました。

これまでの考えでは、対処しきれない

 ――認知症フレンドリー社会とは?

 認知症の人がしたいことをで…

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