旭洋造船が建造し、進水式を迎えた捕鯨母船「関鯨丸」=2023年8月31日、山口県下関市

 海洋国家日本が世界に誇ってきた造船業は、中国・韓国勢に押されてシェアが落ちた。脱炭素や経済安全保障を掲げ、国は手厚い支援に乗り出す。「造船ニッポン」復権の夢を、どこまで追い求めるべきなのか。

 この春、一隻の希少な船が完成した。「関鯨丸(かんげいまる)」(9299トン)。船団による商業捕鯨を束ねる世界唯一の「捕鯨母船」で、国内では実に73年ぶりの新造となる。

 手がけたのは業界中堅の旭洋造船(山口県下関市)。社長の越智勝彦は「カーボンニュートラルを意識した」という。電気モーターで動き、そのために4基の発電機を積む。今は発電のため硫黄分の少ない重油を燃やすが、水素・アンモニアを燃やすエンジンや燃料電池が使いやすくなれば、それに取りかえるのだという。

 「市況の良いコンテナ船など汎用船の生産性を上げるだけでなく、特殊で付加価値の高い船を設計、製造できる力を維持し、欧米から注文があっても造れるようにする。そこに日本の中小造船所の生きる道があると思う」

 世界のおおむね9割の船は日中韓の3カ国で造られている。ただ、日本は1990年代まで世界シェアで40%前後を誇る「お家芸」だったものの、23年には16%まで下がった。

 シェアを奪われた理由はいく…

共有
Exit mobile version