約1年ぶりに会う男は、顔に年相応のしわを刻んでいた。

 2023年6月。千葉刑務所の面会室。男が収監されて、もう25年以上が経つ。

 差し入れた本や哲学、日本人論について、男が静かにぶつける疑問に、元警視庁捜査員の稲冨功(78)は、同級生が語らうように答えていく。

  • 「オウム」を暴走させた3つの転機

 14人が死亡、6千人以上が負傷した1995年3月20日の地下鉄サリン事件。

 その解明につながったのが、目の前に座る元教団幹部、林郁夫の証言だった。

元警視庁刑事の稲冨功さん=2024年11月19日午後4時17分、東京都立川市、遠藤美波撮影

 地下鉄サリン事件発生の2日後、警視庁は山梨県上九一色村(当時)の教団施設へ強制捜索に入った。

 この捜索で、1人のピアニストの女性の監禁事件が明らかになる。

 横浜市の路上で教団に拉致され、約3カ月にわたって監禁されていた。

 保護された女性の証言をもとに、警視庁は4月8日、林を逮捕した。

 取り調べは、当時捜査1課に応援で入っていた第三機動捜査隊員の稲冨に回ってきた。

 教団幹部ではあるが、逮捕罪…

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