吉川洋(よしかわ・ひろし) 1951年生まれ、東京大学名誉教授。専門はマクロ経済学。2010年から17年まで財務省の財政制度等審議会の会長を務めた。日本銀行の植田和男総裁は高校、大学の同級生。著書に「高度成長」「デフレーション」「人口と日本経済」など。

 約11年に及んだ日本銀行による「異次元」の金融緩和をどう評価するのか。日銀による過去の金融緩和策の検証「多角的レビュー」を講評した有識者の一人で、マクロ経済学者の吉川洋・東京大学名誉教授は「根こそぎ間違っている」と断じ、三つの問題点を指摘した。さらに物価高が続いても利上げを急がない今の日本銀行の姿勢にも、国民との「ずれ」が生じていると主張する。

 ――日銀の大規模緩和をどう評価しますか。

 「私は初めから反対だったし、10年以上が経って失敗だったことが明らかになったと考えている。日銀による検証(多角的レビュー)でも、物価2%目標は達成されなかったと認めている。しかし一定の効果があったとして、副作用を考慮してもネット(差し引き)ではプラスだとしている。その結論には、全く同意できない」

 ――どこが間違っていたのでしょうか。

 「何から何まで、根こそぎ間違っているっていうのが私の立場だ。問題は大きく三つある。第一に、(物価が下がり続ける)デフレが一番の問題であるという2013年の出発点の認識だ」

 「デフレには2種類ある。1…

共有
Exit mobile version