写真・図版
国学院大の山本歩夢(左)と平林清澄=東京都渋谷区
  • 写真・図版
  • 写真・図版
  • 写真・図版
  • 写真・図版

 「今の調子はどうですか?」「希望する区間は?」

 次々と飛んでくる質問に、国学院大の山本歩夢は胸を締め付けられた。昨年12月、箱根駅伝を控えた報道陣の合同取材会でのことだった。

 「僕は本当は走れないのになぁ……」

 当時3年生だった山本は、右大腿(だいたい)骨を疲労骨折していた。

 痛みの強さから、箱根駅伝の出走は絶望的だった。

 それでも、主力の山本がエントリーしていることは他校への牽制(けんせい)になる。戦略的な理由で16人の登録メンバーに名を連ね、合同取材会にも出席した。

 走れないことを明かすわけにはいかない。かといって、質問に適当な態度で答えるわけにもいかない。

 「『無』でしたね。記者の方も色々聞いて書いてくださっているのに、申し訳なくて」

 山本が万全なら任せられるは…

共有