たかまつななさん=関田航撮影
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《昨年11月、たかまつななさん(30)は「芸能人を守る法律を作ろう」という活動を始めた。芸能界で明らかになった性加害や過重労働、所属事務所との力関係から生じる芸名の使用をめぐるトラブルなど、芸能界で起きる諸問題を解決するためには、法律の整備が必要と訴えた。

 自身は、お笑い芸人でデビューし、現在は時事ユーチューバーとしても活動している》

 芸能界のことを知っていて、ジャーナリストとしても活動している私じゃないと伝えられないことがあるのでは、という気持ちでした。

 《ユーチューブチャンネルに被害者や識者を招き、解決策を議論したほか、今年2月には記者会見を開いた。先輩の女性芸人が体を触られる現場を目撃しながら、声をあげられなかったという後悔があるという》

 被害にあった人が声をあげられないのには、「自分の夢を人質に取られている」という面があると思います。

 声をあげたら面倒くさいヤツだと思われるのではとか、自分の事務所の先輩やテレビ局の人にたてつくとか、そういう考えになってしまうというところが大きいと思います。

 ◆たかまつ・なな フェリス女学院出身のお嬢様芸人としてデビュー。株式会社笑下村塾を18歳選挙権をきっかけに設立し、出張授業「笑える!政治教育ショー」などを全国の学校や企業、自治体に届ける。「朝まで生テレビ!」などに出演し、若者へ政治意識の向上を訴える。

 《会見では、自身が受けた性被害についても語った。高校生のころ、楽屋で後ろから体を触られ続けたという。あまりのことに驚き、振り返ることができなかった》

 記者会見で何を話そうかと考えるうちに、「私も忘れていたけど、被害あったな」と思いました。

 「こういう世界なんだ」と思って活動を続けるのはつらい。考えるときついので忘れたのかもしれません。

 女性タレントさん、女芸人の方、被害を受けた人は多いんじゃないかと感じています。

 一例として私の経験を話すことにしたという流れで、「告発したい」というのはあんまりないんです。

「明日も喋ろう 2024」

1987年5月3日、朝日新聞阪神支局に侵入した男が散弾銃を撃ち、記者2人が死傷しました。事件から37年。有形無形の暴力が個人の自由や尊厳を脅かす動きは後を絶ちません。屈することなく声を上げる人たちに話を聞きました。

  • 連載「明日も喋ろう 2024」

 《今回の活動のきっかけは、ジャニーズ問題について、自身のチャンネルで被害者を取材したことだった》

 芸能界を知っているから、構造的な問題も含めてよくわかるんです。被害者の方がなぜ声を上げられなかったのかも想像がつく。

 解決策を考えていく必要があると思って、番組の生放送で解決策の案を考え、法律を作るのがいいんじゃないかという意見が出た。

 それを行動に移すべきじゃないかと感じ、私が音頭を取ろうかなと思って始めました。

 《活動に対する反応には、苦しんだという》

 しんどかったですね。先輩の芸人さんによっては、揶揄(やゆ)したりセカンドレイプに近い内容の反応もありました。それにどのように対応するのが正解なのかも悩みました。

 ここでも声をあげることが正解なのか、それによって面倒くさいやつだって思われるかもという気持ちも。

 好きなお笑いの世界がどんどん遠ざかっていくようで、個人的にはとってもつらいことでした。

 《既存メディアには問題解決に向け主体的に動くことが苦手な面があると感じるという》

 メディアって中立であること…

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