高島晨伍さんが使っていた白衣や聴診器=2023年8月31日、東京・霞が関、枝松佑樹撮影

 数年前の夕方だった。病棟を回診して医局に戻ったとき、右手にしびれを感じた。指も思うように動かない。

 「おかしいな」

 大学病院に勤める男性医師は、そのまま意識をなくし、倒れた。脳出血だった。

  • 【連載初回】「労働時間減らせば、島民の命が…」 島で唯一の循環器医は葛藤する

 20年を超える勤務医生活は、長時間労働が当たり前だった。

 朝6時台に家を出て、帰るのは午後11時近く。夜中の呼び出しも多かった。

 大学教員として、学生や若手医師への指導、論文作成や学会発表に力を入れ、月に2~3回は出張にも出かけた。

 働き方に疑問を持ったことはなかった。患者を救いたいという使命感、仲間と危機を乗り越える達成感が勝った。

 ただ、倒れる直前は、夜中に呼び出されて5~6時間の緊急手術をする日が続いた。そのまま病院に泊まり、翌日の夜まで働く日もあった。

 「さすがにつかれた」

 勤務医になって初めて妻に弱音を吐いた。倒れたのは、その直後だった。

 脳出血の後遺症によって、メ…

共有