超円安時代
歴史的な円安ドル高が続いている。家計の負担は膨らむ一方、輸出企業には過去最高益をもたらした。34年ぶりの円安水準は、私たちにとって、企業にとって、日本にとって、「恵み」か「災い」か。その功罪を解き明かす。
為替相場は急激な変動が怖い。だから外国為替証拠金取引(FX)からは距離を置く、はずだった。
だが、一方的に進んだ円安ドル高の流れが、その思いを吹き飛ばした。
「この先も円安が進む」
東京都内の会社員男性(36)が、そう確信したのは4月末だった。
根拠は複数あった。物価高が続く米国の利下げは遠のき、3月に利上げした日本銀行は「緩和的な状況が続く」との見通しを強調した。縮まらない日米の金利差を背景に、外国為替市場では1ドル=150円台まで円安が進んだ。
それでも、財務省と日銀は円買いドル売りの為替介入に動かなかった。最後の一押しになったのは、日銀の植田和男総裁が4月26日の記者会見で円安を容認するかのような発言をしたことだ。
会見のあと、男性は約2年ぶりにFXで円売りドル買いのポジションを取る、勝負に出た。想定通り円安が進めば利益になる。「円安は堅い。祝日に為替介入もないだろう」
FXは業者に担保として証拠…