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10月30日 ヤンキースを下し、悲願のワールドシリーズ制覇。トロフィーを手にする=AFP
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 ドジャースの大谷翔平選手(30)が2年連続3度目の最優秀選手(MVP)を手にした。大リーグ史上初となる50本塁打、50盗塁の「50―50」を達成するなど、その活躍に世間が一喜一憂したシーズンだった。

 グローバル化が進む中、1人の野球選手の動向が大きくクローズアップされた理由を、日本総合研究所会長の寺島実郎さんにたずねた。

 大谷選手の活躍への熱狂ぶりを社会現象ととらえるなら、その「大谷現象」を通して、グローバリズムの光と影の部分が見えてくる。グローバリズムとナショナリズムの結節点で、大谷選手がどんな存在であるのかをイメージすると非常に興味深い。

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 大谷選手が生まれた1994年は、日本が「工業生産力モデル」の優等生として戦後復興と経済成長を遂げた結果、GDP(国内総生産)のシェアで世界2位の約18%を占め、ピークを迎えた。それが昨年は4%まで落ち込んだ。

 この30年での日本の国際競争力の低下と経済の埋没は著しく、2010年にGDPで中国に抜かれた。その頃から、日本人はえも言われぬ不安にかられ始め、さらに翌11年には東日本大震災が起き、衝撃を受けた。

 その不安の中で、「日本を、取り戻す。」を掲げた「脱デフレのインフレ政策」といえるアベノミクスを進める安倍政治に、国民は吸い寄せられていった。

 プロスポーツ界に目を向けると、この間、野球やサッカー、バスケットボール界で国境を越えた市場の一体化が進んでいった。球界でも、野茂英雄選手やイチロー選手らが大リーグへと向かう流れができ始めた。

 野球少年はかつて、甲子園やプロ野球を目指し、漫画「巨人の星」の主人公のように輝くという夢があった。それが、グローバル化が進んだことによって、複雑な思いを抱くようになった人もいる。

 なぜなら、日本のプロ野球は…

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