ウクライナはロシア軍に抗戦するのに人工知能(AI)技術を積極活用していると言われる。ただ、AIの能力を引き出すのは、データ処理や機械学習の元となる情報が必要だ。ウクライナはどのように市民から情報を収集しているのか。また、AIの究極の軍事利用は核兵器への応用だ。前ウクライナ大使で、在ロシア大使館にも勤務した倉井高志氏に聞いた。
――ウクライナではAIを駆使してロシア軍に対抗していると聞きます。
「ゼレンスキー大統領は、2019年5月に大統領に就任したが、その際のキャッチフレーズが、「State in Smartphone」、つまり「スマートフォンのなかにある国家」と言って、行政手続きなどがスマートフォンで手軽にできるようデジタル改革に取り組んだ。その特徴がスマートフォンの市民プラットフォーム「Diia」というアプリだ。国民の便宜のためという理由のほか、政府調達を透明にして、汚職を排除しようという狙いがあった。私が大使だった時も市民が使っていたが、これが後のロシアとの戦いに役に立った」
――戦争では、そのアプリをどのように使っているのでしょうか。
「ロシアの軍事侵攻を受け…