紺碧(こんぺき)の紅海を小さな漁船が横切っていく。砂浜では少年たちがサッカーボールを追いかける。浜辺に波の音と少年の声だけがこだましていた。

  • 【連載】愛と思惑のソマリランド

 昨年11月上旬、アフリカ北東部の「未承認国家」ソマリランド北部のベルベラ港は、荒れる紅海情勢を想像させないほど穏やかだった。内陸の「首都」ハルゲイサの涼しさと対照的に、強烈な太陽光が地面を焼き、気温は40度近くに達する。

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紅海に面したソマリランド北部ベルベラの浜辺を横切る漁船。対岸のイエメンでは反政府武装組織フーシが活動している=2024年11月12日、今泉奏撮影

世界的要衝にフーシ、アルカイダ、海賊が集う

 うだるような暑さで、人も猫も木陰で寝転んでいる。ベルベラはもともと小さな漁港で、沖は日本にも届くマグロの好漁場でもある。昼食時、体長80センチほどのマグロの炭火焼きを囲みながら、地元の重鎮議員アブドゥラハマ・イスマイルさん(83)に話を聞いた。

 「今ものどかさは残している…

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