浅草花やしきを拠点に活動していたアイドルグループ「花やしき少女歌劇団」のメンバーだった酒井美紅さん(26)は昨年、母になった。

 取材に訪れると、1歳半になる娘の小さな手を取ってあやしていた。

 歌劇団に入ったのは小学5年生のとき。人見知りで引っ込み思案の性格を変えたくて、新聞のチラシで知った歌劇団のオーディションを受けた。

 4期生として入団。2期上に、エースだった木村唯さんがいた。

 同い年なのに、ステージではいつもセンターに立ち、MCもこなしてファンも多い唯さんは、「雲の上の人」だった。

 近くにいても緊張して何を話していいか分からないくらい。一緒に撮ったプリクラは宝物だ。

 それでも、一緒にごはんを食べたり遊んだりしているうちに、次第に気軽に話せるようになった。

右足を失った唯さんを支えたフォーメーション

 唯さんががんの治療でしばらく歌劇団のレッスンを休んだときは、「早く戻ってきてほしい」という一心でレッスンに励んだ。

 戻ってきた唯さんは、右足の切断手術を受けていた。

 舞台裏で「お客さん、びっくりしていなくなっちゃわないかな」と不安がっていた。

 「そんなことないよ、唯ちゃんの笑顔を見たら大丈夫だよ」と励ました。

 歌劇団のメンバーは、右足を失った唯さんをステージ上でどう支えるか話し合った。

 仲が良かった美紅さんたちが近くに陣取り、片足で立つ唯さんを支えるフォーメーションを組んだ。

 ステージは観客の目の高さと足元の位置が同じくらいになる。身長167センチと一番大柄な美紅さんは、万が一唯さんが倒れそうになったときに受け止められるよう、背後に配置された。

唯さんに退団することを告げると

 でも、美紅さんは高校3年の…

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