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労働経済学が専門の慶応大学の山本勲教授

 人手不足が深刻化するなか、働き手としての女性の存在はより重要視され、ここ10年間で15歳~64歳女性の就業率は62.4%から73.3%まで増えた。しかし、働く女性のうち正社員は半分以下で、女性登用の伸びも鈍い。そんな中、女性登用が進んでいる企業では業績にも好影響が出始めていると指摘する慶応大学の山本勲教授(労働経済学)に聞いた。

 実は日本の長時間労働は、生産性が上がっていません。働き手が減る時代に、どのような働き方が求められるのでしょうか。
 性別によって偏りが生じる働き方の問題点や、誰もが働きやすい新たな働き方について考えます。

――企業における女性の活用と業績について研究されていますが、どのような関係があるのでしょうか。

 「2014年と2018年に、上場企業を対象に女性活用の度合いと業績の関係について研究しました。経済学では、女性を雇用することのメリットは二つあると言われています。一つは、多様な見方を採り入れて生産性が上昇する点。もう一つは、少し逆説ですが、日本全体で女性の賃金が不当に安くなっているために、雇用コストが低くなる点です。外資系企業の間では、日本で中途採用をすると、とても優秀な女性が来てくれるが、給与提示の際に前職の給与を参照すると、こんな安くていいのかと感じると言われていました」

 「2014年時の研究では2000年以降のデータを分析した結果、二つのメリットが相まって、正社員の女性割合が高いほど企業の利益率が高まる傾向が出ました。ただ、後者の賃金が安いという理由で、企業の業績が良くなるというのは決して健全ではありません」

 「一方、2018年時の研究…

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