自宅の庭に立つカルーセル麻紀さん=本人提供
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 悪いけど、言えないことも書けないこともいっぱいあるわよ。

 これまでの人生、いろんなことがあったから。

 《LGBTQ(性的少数者)という言葉が認知されるより、はるか昔。タレントのカルーセル麻紀さん(81)は、その先駆者として芸能界を駆け抜けてきた。昨今の動きをどう受け止めているのか》

 小学生のころから「(女の)なりかけ」と言われて。

 石こそぶつけられなかったけれど、言葉の石はずいぶん投げられたわね。

 すごく嫌だったけれど、自分がなんでこうなっているのか分からない。

 子ども心に「なんでこんなのついてるんだろう。忌まわしい、はさみで切りたい」と思っていました。

 そんなこと、親にも言えなかったけれど。

◆かるーせる・まき 
 1942年、北海道釧路市生まれ。15歳で札幌のゲイバー「ベラミ」で働き始めたのを皮切りに、全国のゲイバーを渡り歩く。19歳のとき、大阪のOSミュージックホールで舞台デビュー。以降、テレビや映画、雑誌のグラビアなどで活躍する。30歳のとき、モロッコで性別適合手術を受けて話題になる。

  • 連載「明日も喋ろう 2024」
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 丸山明宏さん(現・美輪明宏さん)の存在を知ったのは中学生のころ。

 三島由紀夫さんの小説「禁色」を読んだのもそのころで、「ああ、私と同じ人がいるんだ。生きていく道はこれしかない」と思ったわけ。

 高校には入ったけれど、アルバイトでためたお金を持って家出をしたのが15歳のとき。

 東京へ行くつもりで列車に乗ったのに、家出がばれて、途中で車掌さんに捕まりそうになりました。札幌まであと2駅という琴似駅付近で、デッキから線路に飛び降りたんです。

 実は列車の中で会社員風の男の人に声をかけられ、札幌にもゲイバーがあることを知りました。

ゲイバー? 競馬場?

 とりあえずすすきのへ向かい、「ゲイバーってどこにありますか」と尋ねたら「競馬場? 遠いよ」と言われたような時代です。

 流しのお兄さんはさすがに知っていて、当時札幌に1軒しかない「ベラミ」へ連れていってくれました。

 お店はまだ閉まっていたけれど、「寒いから中に入りな」と言われて。

 「家出だと使ってもらえないから、18って言いなさい」とバーテンさんに教えてもらってね。

 そうしたらママが入ってきて、「なんだ、このガキは」って。こっちは丸坊主だから。

 「働きたいんです」と言うと「家出だろ」。だから「違います」とがんばって。

 そのまま控室でお化粧をさせられて、ショータイムに舞台で踊りました。

「明日も喋ろう 2024」

1987年5月3日、朝日新聞阪神支局に侵入した男が散弾銃を撃ち、記者2人が死傷しました。事件から37年。有形無形の暴力が個人の自由や尊厳を脅かす動きは後を絶ちません。屈することなく声を上げる人たちに話を聞きました。

 住み込みで働くことになりましたが、周りはみんな、大先輩。じいさんかばあさんかわからないような人たちが、お化粧をしているのがおかしくて。

 朝起きたら、はげてるおじさんが寝ているから、「だれだ」と思ったらママだったりね。

 親にばれたのは1カ月後くらいたってから。友だちに手紙を書いたら、そこから足がついてしまったの。

 両親に釧路の家へ連れ戻され、地元のスナックでバーテンダーとして働き始めると、「オカマがいる」という噂がすぐに広まりました。

 珍しそうに、みんなが私を見にくるんです。

 母親に「お願い。1年だけ、もう1回やらせて」と言ってまた飛び出して。

 それから北海道を流れ歩き、いろんなところへ行きました。ホルモン注射のホの字も知らなかったころ。室蘭には一番長くいたかな。

寅さんのように流れ歩いて

 うちのマネジャーが言うのよ。

 「麻紀さんは女版寅さんですね」って。

 男と別れたらどこかへ行き、もめたらまたどこかへ行き。

 飽きっぽいし、すぐにけんかはするし。

 でも楽しかったですよ。

 18歳の終わりごろかな。名古屋で男ができてね。女から奪ったのに、その女がまた取り返しにきたのよ。

 そのとき、「やっぱり本物の女にはかなわない。女になってやろう」と思い始めたの。

 19歳になるころには、のど仏が出てきてひげも生えて。筋肉もついて「このままだったら私、男になってしまう」と焦っていたのね。

 そうしたら、「タマを取ればいいのよ」と周りに言われて驚いたんです。

《手術を受けた麻紀さんは、20代でテレビ業界への進出を果たす。

初めて出演したテレビ番組は、1965年に始まったばかりの深夜番組「11PM」(日テレ系)だった》

 テレビでは、足だけだして「この人は男でしょうか、女でしょうか」と聞いたりね。

 今ならとんでもない。

 ばかにされて、生放送中に怒…

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