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小山宙哉さん©Hayato Oishi
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 2025年は、人気漫画「宇宙兄弟」の物語が始まった年だ。兄弟で宇宙飛行士を目指し、一緒に月に立つ夢を追う漫画は、「2025年」を舞台に連載がスタートした。そして今、人類は再び月面着陸を目指している。漫画家の想像に、現実が追いついてきたのか。作者の小山宙哉さん(46)に聞いた。

 ――「宇宙兄弟」の物語は2025年に始まりました。漫画の1巻で、宇宙飛行士の弟・日々人(ヒビト)は月面長期滞在クルーとして米国で会見し、兄・六太(ムッタ)はJAXA(宇宙航空研究開発機構)の宇宙飛行士選抜試験を受けます。

連載開始時は「ちょっと遠い未来」

 (2007年12月の)連載開始時は2025年はだいぶ先で、近未来、ちょっと遠い未来ぐらいの感じでした。宇宙飛行士が再び月に行くのはいつ頃かというのを、なんとなく取材していく中で、このぐらいなら違和感はないかなというのが、2025年でした。

 ついにその年が来てしまったか、という感じです。本当に再び月に行くのかなという感じがずっとしながらも、連載を続けてきました。

漫画「宇宙兄弟」とは

 東京生まれの南波兄弟、兄の六太と弟の日々人が、幼い頃に目撃したUFOをきっかけに宇宙飛行士を目指し、一緒に月に降り立つ夢を実現させていく物語。2人を主人公に様々な人間ドラマが描かれる。週刊モーニング(講談社)で2007年から連載が始まり、単行本は現在44巻まで。テレビアニメや映画にもなっている。

 ――米国が主導する月探査「アルテミス計画」は、人類が再び月に立つことを目指しています。「宇宙兄弟」では、日々人が2026年、六太が29年に月面着陸しました。

 (1969年の)アポロの月面着陸は、僕らの世代もそうですが、いまの若い人たちも直接見ていないですし、知らないわけです。今、それがまた起こる可能性がある。再び月に立ったときは、みんなが月を見上げると思います。みんなで見届けたいですよね。まさにこれから月に行くとなったときに、「宇宙兄弟」が注目されたり、参考になったりすれば、うれしいですね。

 2025年を迎え、いよいよ漫画の世界が、現実とシンクロするのか。インタビューの後半では、小山さんが影響を受けた漫画、リアルな描写の理由、佳境に入った「宇宙兄弟」について語ってもらいました。

■架空の漫画が、現実とをつな…

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