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統合失調症の経過のイメージ

 100人に1人がなるという、統合失調症。身近な精神疾患の一つだが、十分に理解されているとは言いがたく、誤解も多い。どのような病気なのか。

 統合失調症は、脳の様々な働きをまとめる(統合する)ことができなくなる病気で、三つの特徴的な症状が表れる。

 一つは、妄想や幻覚などの「陽性症状」。そして倦怠(けんたい)感や意欲低下などの「陰性症状」、記憶や注意力が低下する「認知機能障害」がある。

 特に陽性症状が出ている時は、本人には病気という自覚がないことが多い。「監視されている」といった言動や、一貫性のない話の内容などから、周囲の人が異変に気づきやすい。

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 一般的には、眠れないなどの前兆期があり、次いで陽性症状が中心の急性期、陰性症状が中心の休息期、徐々に症状が治まるものの認知機能障害が出る回復期へと至る。

 なぜ統合失調症になるのか、原因ははっきりわかっていない。もともと「なりやすい」要因をいくつか持っている人に、ストレスなどが加わると、それが引き金となり発症すると考えられている。

 発症しやすい年齢が10~30代と若いことも一つの特徴だ。藤田医科大学の岩田仲生教授(精神医学)は、「高校生くらいから発症することが多く、その後の学校生活や就職などライフステージに大きく影響する」と語る。女性は出産後や更年期などに発症するケースも多い。

 治療は主に、薬物治療と心理社会的治療を組み合わせる。

 薬物治療は、脳の神経伝達物質の働きを調整して症状を抑える抗精神病薬を服用する。症状が治まってからも薬を続けることが、再発を防ぐために有効だとされている。

 心理社会的治療は、認知行動療法や社会生活技能訓練、精神科デイケアや作業療法などがある。

 治療を経て、長期的に良好な経過をたどる人は50%くらいと言われる。そのほか、症状を抱えながら社会生活に戻っていく人もいる。

 周囲の人はどう接したら良いのか。岩田さんは「病気で見えないものが見えたり、聞こえないものが聞こえたり、本人も怖い思いをしている。その人が体験している世界を否定せず、聞いてあげるだけで良い。恐れるのではなく、まずはどのような病気なのかを知ってほしい」と語る。

 メンタルヘルスに関する疾患の啓発活動をしているシルバーリボンジャパン代表の関茂樹さんは、自身も統合失調症と診断された経験がある。「決して珍しくない病気でありながら、オープンにならないことが多く、実態を耳にすることが少ないかもしれない。患者や家族が前向きに生活するために、周囲の正しい理解が必要です」と話す。

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