イラスト・山本美雪
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わたしが「犯人」にされたとき(後編)

 マンションの駐輪場で、他人の自転車カバーを破っただろう――。ある日、呼び出された警察署で追及され、身に覚えがないまま、「犯行」を認める供述調書にサインしてしまった女性(51)。だが、検察に呼び出された際、前科がついてしまうことを知り、弁護士に依頼して裁判で闘うことを決意した。

 カバーの持ち主の供述調書や、カバーの写真、実況見分の調書、警察署でつくられた自分の供述調書……。

 こうした証拠が2022年10月、弁護人の求めに応じる形で、検察側から開示された。正式な刑事裁判では、裁判が始まる前に、捜査側が収集した各種証拠の開示を被告側が求め、閲覧・謄写するのが通例だ。

 証拠の中には被害届があり、被害者が警察に申告して捜査が始まったとみられることがわかった。

 その他に、防犯カメラ3台分の映像があった。

 女性が弁護士と一緒に見ると、普段出入りに使っているマンション裏の出入り口から、ゴミを持って出て行く自分の姿が映っていた。ゴミ置き場にゴミを捨て、駐輪場の自転車を整理していた。その後、マンションの正面玄関へ行って掲示物をはがし、ポストの中身を確認し、裏の出入り口へと戻っていった。

 「あの日のことだ」と、思い当たった。

  • 裁判に臨むことを決断するまでの「前編」はこちら

■カバーが破れる様子、なかっ…

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