愛知県豊田市の上下水道局を昨年7月、岸田文雄首相(当時)が訪れた。
目的は水道管の維持・管理に使われている最先端技術の視察。岸田氏は報道陣に「(水道管の)漏水調査にかかる時間と費用を10分の1に効率化させる効果があると実感した」と語った。
豊田市では、人工衛星画像をAI(人工知能)で分析して漏水リスクの高い水道管を選び、そのエリアを優先的に調査している。
以前は、調査員の長年の経験をもとに調査エリアを選んでいた。現場に出向いて水道管の異常を検知するセンサーを設置したり、水道管の漏水音を耳を頼りに調べたりしていた。上下水企画課主幹の岡田俊樹さん(57)は「総延長3695キロの市内の水道管のうち、調査できるのは1年で80キロだけだった」と言う。
どの自治体も水道関連の人手や予算には限りがある。全国の水道管(総延長74万キロ)のうち、法定耐用年数の40年を超えるものは16万キロ。地球4周分にものぼる。調査が追いつかず、年間2万件もの漏水が起きているという。
豊田市は、さらに調査の効率を上げようと宇宙ベンチャー「天地人」(東京)の技術に目を向けた。
調査期間8割減
天地人は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の知的財産やJAXAの業務で得た知見を使った事業をする「JAXAベンチャー」で、衛星のビッグデータを活用するビジネスを手がける。
国内外の多種多様なデータをもとに、農作物栽培や風力発電所の適地を提案したり、温室効果ガスの放出量を推定したりするといったサービスを展開しつつある。
その一つが、水道管の漏水リ…