写真・図版
ふくしねっと工房のグループホーム。住宅街の一角にある=2024年6月19日午後4時44分、千葉県八千代市、三宅梨紗子撮影
  • 写真・図版

 住宅街を歩いて回り、行政の広報やチラシを各戸に配る。千葉県船橋市で暮らす20代の男性は、1年半前からポスティングの仕事を始めた。

 男性には重度の知的障害と自閉症、自分や他人を傷つけたり、物を壊したりする行動を頻繁に起こす「強度行動障害」がある。

 最初は、紙を自分の手で持つこともままならなかったが、今では1枚1枚、投函(とうかん)できるようになってきた。変化の背景には何があるのか。

 男性は2022年5月まで3年近く、愛知県内にある別のグループホーム(GH)を生活の場にしていた。その運営会社、株式会社「恵」(東京都港区)は今年6月に利用者から食材費を過大徴収するなどしたとして、愛知県と名古屋市から行政処分を受けた。

 男性の母親は「重度の障害者は施設か在宅か、行き場がない。受け入れてくれて感謝していた」と振り返る。

 ただ、男性の入居後は日常生活を送る場として、不信感が募っていったという。

我が子の表情から消えていった笑顔

 週末にGHを訪ねると、男性…

共有