情報公開・個人情報保護審査会の答申では、「全面不開示とすることが妥当である旨の諮問庁の説明は認められない」として厚労省に文書の一部を開示するよう求めた

 過労死認定をめぐり厚生労働省が2017年9~12月に加藤勝信厚労相(当時)へ説明した文書について情報公開請求をした記者のもとに、厚労省から2回目の開示文書が届いた。1回目は全面黒塗りで出してきた文書10枚それぞれについて、総務省の情報公開・個人情報保護審査会が全部または一部を「開示すべきだ」と答申したにもかかわらず、9枚は全面黒塗りのままだった。異例の「答申やぶり」だ。

 審査会の答申通りに黒塗り部分が開示されると思っていた記者は、19年12月に厚労省から届いた2回目の開示文書を見て驚いた。10枚のうち、内容の一部が開示されたのは1枚だけ。野村不動産とは別件とみられる過労死事案の概要が書かれていた。

 残りの9枚は、全面黒塗りの「のり弁」と呼ばれる状態のままだった。全面不開示にした理由について、厚労省は次のように説明した。

 ①一部を開示した場合、監督指導に関する文書であり、個別の過労死事案が書かれていることが明らかになる

 ②すると、過労死が監督指導の端緒だったり、指導の経緯の中で起きたりしたことが明らかになるおそれがある

 ③他の企業が監督指導を受けた場合、その端緒や経緯が公表されることを懸念し、立ち入り検査の受け入れや資料の提出などに非協力的になるおそれがある

 だがこの理屈は、厚労省が審査会に説明したものと同じだった。審査会はそれに対し、文書の表題や形式を明らかにしても厚労省が指摘するような懸念はなく、全面不開示は認められないと指摘。さらに、文書には厚労相が記者会見で説明した事案や、厚労省が指導を発表した事案が含まれており、そうした公表済みの情報は開示すべきだと答申していた。にもかかわらず、厚労省は答申に従わず、同じ理屈で開示を拒んだのだ。

情報公開・個人情報保護審査会の答申を受けて、厚生労働省が開示した12枚の文書。一部を開示するよう求めた答申に従わず、9枚は「のり弁」のままだった

過労死申請ならすべて監督調査 答申やぶりは0.12%

 記者も、厚労省の理屈には違和感を覚えた。

 16年に電通の新入社員だっ…

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