【予告編】刑務所で学び直す

 「10+8」の問題は「18」と正解できた。

 「8+10」になると、手が止まった。

 「13は10と3」という例題の次に、「17は10と□」という問題が続く。

 高松刑務所(高松市)にある学び直しの場「教科指導」の教室。昨年10月から学び始めていた受刑者のオカダさん(83)=仮名=は、答えを書けずにいた。

 「20と18はどっちが大きいですか」。そんな問いにも考え込んでしまう。

 算数を指導する上野忠昭さん(68)から、「どちらが大きいかわからないと、損をしてしまいますよ」と声をかけられ、一つずつ教えてもらった。

2ケタ+1ケタの足し算のプリントを進めるオカダさん=2024年1月18日午後1時37分、高松市松福町2丁目、多知川節子撮影

 オカダさんは、妻や息子と自営の清掃業で生計を立ててきた。日常生活の買い物は家族に頼り、自分で買い物をする時は小遣いでチョコやガムを買う程度。

 その時は、もっぱら「千円を出しておつりをもらう」。

 ただ、今回、収容されたのは窃盗の罪だ。親しくしてくれる女性に食料品や日用品を届けたくて、スーパーでカゴいっぱいの品をレジを通さず持ち出し、逮捕されたという。

基礎学力を欠くことで犯罪を繰り返してしまう人に向けた刑務所内での学び直しの授業を連載で伝えます。83歳で初めてひらがなを書けるようになったオカダさん=仮名=は、算数の学習にも励んでいます。

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 そんなオカダさんが今年1月、講師や刑務官を驚かせた場面があった。

 社会の授業でのことだ。

 興味のあるところから都道府…

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